アーユルヴェーダ流・ごま油の温潤ケア

秋が深まり、朝晩の冷え込みや乾いた風を感じるようになりました。
この時季は、アーユルヴェーダで「ヴァータ(風のエネルギー)」が高まりやすい時期。
乾燥・冷え・気分の揺らぎ・眠りの浅さなど、季節特有の不調は、このヴァータの乱れと関係しています。
アーユルヴェーダでは、「温かさ」と「潤い」を保つことが秋のセルフケアの鍵。
この“潤いを与える”行為は、サンスクリット語で「スネーハ」と呼ばれ、「愛・優しさ」という意味も含みます。
体に油を与えることは、自分を思いやる時間でもあるのです。
ごま油の“温潤性”で風を鎮める
ごま油(セサミオイル)は、アーユルヴェーダのなかでも最もヴァータを鎮めるオイルとして知られています。
温める性質(ウシュナ)を持ち、乾燥した体に潤いを与え、血行を促しながら冷えをやわらげてくれます。
また抗酸化作用が高く、肌や関節をしなやかに保つ働きも。
朝の冷え込みを感じたら、手のひらで温めたオイルを足首・手首・みぞおちに軽く塗るだけでも十分。
風が落ち着き、心身の巡りがやさしく整っていくのを感じられるでしょう。
朝の白湯+ごま油で内側から潤す

乾いた空気で消化力(アグニ)が低下しやすい秋。
朝一杯の白湯は、体を内側から温め、アグニをやさしく目覚めさせます。
そこにほんの少しのギー(精製バター)やごま油を加えると、腸の働きを整え、内側から潤いを補ってくれます。
お湯をゆっくり飲みながら、「今日も穏やかに過ごそう」と呼吸を深めてみてください。
温かさが体の芯に届くとともに、気持ちも落ち着いていきます。
夜のアヴィヤンガ(全身オイルマッサージ)
秋の夜は、日中に乱れたヴァータを鎮める絶好の時間。
ごま油を人肌に温め、手のひらで全身をやさしく撫でるようにマッサージします。
肩・腰・足裏を丁寧にケアすると、血流が促進され、眠りの質も深まります。
シャワーやお風呂の前に行い、軽く流すとベタつかず肌もしっとり。
週に数回続けるだけで、冷えにくく、落ち着いたリズムの身体に変わっていきます。
頭皮オイルケアで“巡り”を守る
秋は頭皮も乾燥しやすく、疲れやすい季節。
温めたごま油を数滴、頭皮にすり込み、こめかみや後頭部をマッサージしてみましょう。
これだけで血流が整い、目の疲れ・肩こり・睡眠の質にまで良い影響を与えます。
アーユルヴェーダでは、頭部は「全身のエネルギーの出入口」と考えられています。
ヘッドオイルケアは、体の巡りだけでなく、心の落ち着きを取り戻すセルフケアでもあるのです。
おわりに:冷やさないより、“温かく保つ”

秋のケアで大切なのは、冷えを防ぐよりも「温かさを育てる」こと。
温めて、潤して、やさしく包む。それがアーユルヴェーダの温潤ケアの本質です。
ごま油のぬくもりに包まれながら、呼吸を深く整え、内なる火(アグニ)をやさしく灯す。
その小さな習慣が、秋の風にも揺らがない穏やかな心と体をつくります。
